【AE案件】アニメーション動画の適正価格の決め方。1分で見積もりが作れるツールも公開
✓ 「この案件、いくらで受ければいいのか分からない」
✓ 「Ae案件の相場を調べても幅がありすぎて参考にならない」
✓ 「どういう基準で見積り金額を決めれば良いのかが全く分からない」
こういった悩みを持っているAeクリエイターに向けた記事です。
After Effectsを教えていると、一番多く届く相談があります。それが「この案件、いくらで受ければいいですか?」という質問です。
結論から言うと、
価格は感覚で決めるものではなく、工程を積み上げて構造で決めるもの
という話です。この記事では、アニメーション動画(実写撮影を伴わない、イラストや図・文字を動かす動画)の料金がどういう構造で決まっているのかを、工程ごとに分解して解説していきます。
あわせて、質問に答えるだけで見積もりが作れる無料ツールも公開したので、記事を読んだあと実際に自分の案件で計算してみてください。
なぜアニメーション動画の相場は「調べても分からない」のか
「モーショングラフィックス 相場」で検索すると、こんな数字が並びます。
✓ 1分あたり数万円〜
✓ 30万円〜200万円
✓ 高品質なら30万円台〜
幅がありすぎて、参考になりません。自分が受けようとしている案件がどこに当てはまるのか、まったく判断できないはずです。理由は2つあります。
制作会社とフリーランスでは固定費の構造が違う
ネット上の相場情報の多くは、制作会社の料金表がベースになっています。制作会社には、
✓ ディレクター、デザイナー、アニメーターの人件費
✓ 営業担当の人件費と営業活動のコスト
✓ 事務所の家賃
こうした固定費があります。案件が入っていない月も、これらは発生し続けます。だから、その固定費を回収できる価格設定が必要になる。制作会社の見積もりが高いのは、ぼったくっているからではなく、構造的にそうならざるを得ないからです。
フリーランスにはこの固定費がほとんどありません。営業担当も事務所も抱えていない。つまり、同じ品質のものを作っても、制作会社より低い価格で提示できる余地があるということです。
逆に言えば、制作会社の相場をそのまま持ってきても、自分の適正価格にはなりません。
「30秒でいくら」は答えられない
もう1つの理由は、動画の長さだけでは金額が決まらないからです。同じ30秒でも、こんなに違います。
✓ 台本も絵コンテも素材も全部支給され、指示通りに動かすだけの案件
✓ 「うちのサービスを紹介する動画を作りたい」の一言から、構成を考え、絵コンテを描き、イラストを集め、動きをつける案件
作業量は数倍違います。それなのに「30秒だからいくら」で答えてしまうと、後者を受けたときに確実に赤字になります。価格は、工程を積み上げてしか決まりません。
料金を決める4つの工程

アニメーション動画の制作費は、大きく4つの工程に分けられます。それぞれ「何をする作業か」「何によって金額が変わるか」を見ていきます。
① 台本費 – 何を、どの順番で伝えるかを決める
動画の設計図の中でも、一番上流にある工程です。「誰に、何を、どういう順番で伝えるか」を言葉で組み立てます。金額が変わるポイントは、クライアントがどこまで用意しているかです。
✓ 完成した台本がある → この工程の費用は発生しない
✓ メモや箇条書きだけある → 情報を整理して、動画の流れに組み立て直す
✓ 何もない、相談から一緒に考えたい → ヒアリングから入り、企画そのものを作る
3つ目は実質的にコンサルティングに近い作業です。ここを「おまけ」で無料対応してしまう人が非常に多いのですが、時間を確実に消費する工程なので、必ず金額に入れてください。
② 素材費 – ロゴ・イラスト・写真を集める手間
動画に登場する素材を用意する工程です。ここでいう費用は、素材を探して選ぶ「手間」に対する対価であって、素材サイトの購入代金そのものではありません。実費は別で請求するのが基本です。
✓ すべてお客様が用意してくれる → 費用は発生しない
✓ 主要なものはある → 足りないイラストや図を素材サイトで探して補う
✓ ほとんどない → 必要な素材をすべてこちらで探して集める
意外と見落とされがちですが、「イメージに合う素材を探す」作業は時間を食います。3つ目のケースでは、素材探しだけで数時間〜数日かかることも珍しくありません。
③ 絵コンテ費 – 場面ごとの見た目を設計する
台本(何を伝えるか)を、画面の設計図に落とし込む工程です。どのカットで何を見せるか、どんな配置・色・雰囲気にするかを決めます。
絵コンテ費は、アニメーション費のおよそ8割が目安
つまり、動かす作業とほぼ同じくらいのコストがかかるということです。多くの人が思っているより、ずっと重い工程です。
なぜかというと、絵コンテの段階で動画の質の大半が決まるからです。ここが決まっていれば動かす作業は迷いなく進みますが、曖昧なまま着手すると、作りながら悩み、作り直し、結果的にアニメーション工程の時間が膨れ上がります。
注意してほしいのは、参考動画を渡されて「こんな感じで」と言われるケースも、絵コンテはこちらで作ることになるという点です。参考イメージがあることと、絵コンテがあることは別物です。ここを混同すると、無償で設計作業を引き受けることになります。
なお、絵コンテはあるけれど制作用のデータ(Illustratorなど)は無い、という場合も、こちらでデータを作る手間が発生します。この場合は絵コンテをゼロから作る場合の4〜6割程度が目安です。
④ アニメーション費 – 全体の基準になる工程
実際に動きをつける工程です。ここが料金全体の基準になります。金額を決めるのは「動きのタイプ」で、大きく3つに分かれます。
✓ シンプル テキストが動く。図形を少し添える程度。スライド資料に動きがついたイメージ
✓ 標準 イラストや図の素材をしっかり使って作る。よく見るサービス紹介アニメのレベル
✓ 3D 3DCGを使う、その他の特殊な表現をする
シンプルと3Dでは、同じ尺でも単価が大きく変わります。ヒアリングの段階で、クライアントがどのレベルをイメージしているかを必ず確認してください。ここがズレたまま見積もりを出すと、後から「思っていたのと違う」という話になります。
この4つに加えて、ナレーションやBGM・効果音といった音の費用、広告案件であればサイズ違い(縦・横・正方形)や尺違いのバージョンを作る費用が乗ってきます。
金額の目安を実例で見る

工程を分解したところで、実際の数字を見てみましょう。ここではぼく自身がフリーランスとして直接取引をしてきた経験をもとにした基準値を使います。
30秒のサービス紹介動画の例
✓ 台本:あり(支給)
✓ 素材:主要なものはある
✓ 絵コンテ:こちらで作る
✓ 動き:標準タイプ
✓ BGM・効果音:あり
この条件で、おおよそ19万円前後になります。内訳を見ると、アニメーション費と絵コンテ費で全体の大半を占め、素材費や音の費用は補助的な位置づけになります。
長さが変わるとどうなるか
ここで重要なのは、長さと金額は単純比例しないということです。30秒が19万円だからといって、3分(6倍)が114万円になるわけではありません。実際には60万円台に収まります。
理由は、長い動画ほど作った要素の使い回しが効くからです。一度デザインしたテンプレートやアニメーションのパターン、トランジションは、後半のシーンでも再利用できます。
逆に言うと、短い広告ほど秒単価は高くなります。15秒のSNS広告は全カットが見せ場で、使い回しの余地がほとんどありません。1秒あたりの密度が濃いので、「短いから安くしてください」という要望には、この構造を説明して応じないほうがいいです。
実際に自分の案件で計算してみる
ここまでの料金構造を、すべて計算式にしたツールを作りました。
質問に答えていくだけで、工程ごとの内訳つきの見積もりが約1分で完成します。出てきた見積もりはそのままコピーして、クライアントへのメッセージに貼り付けられる形式です。登録は不要で、無料で使えます。
使い方は簡単です。動画の用途、長さ、素材の有無、動きのタイプなど、選択肢をタップしていくだけ。画面下に金額がリアルタイムで表示されるので、「絵コンテを支給してもらったらいくら下がるか」といったシミュレーションもできます。
出した金額を、そのまま提示していいのか
ここが、この記事で一番伝えたい部分です。
ツールが出す標準価格は、ぼくがフリーランスとして直接取引をしてきた経験に基づく相場水準です。地域や案件の性質、その人のスキルによっても変わるので、絶対的な正解ではありません。あくまで一つの基準として受け取ってください。
そのうえで、正直に伝えておきたいことがあります。
この金額は、クラウドソーシングでは通用しないことも多い
ランサーズやクラウドワークスの案件で、標準価格をそのまま提示しても、受注できないことも多い。
クラウドソーシングは競争入札の場です。複数の応募者が並び、クライアントは提示された金額を比較する。つまり価格を決めているのは制作者ではなく、需要側です。積み上げ計算で出した適正価格と、市場で成立している価格は、違う場合が多いです。
だからツールには、価格レベルを切り替える機能をつけました。
✓ 駆け出し クラウドソーシングの実勢に近い水準
✓ 実績すこしあり レビューが付き、選ばれ始めた段階
✓ 標準 直接取引の相場水準
駆け出し価格は「定価」ではなく「投資」
ここを勘違いしないでほしいのが、駆け出し価格は実績とレビューを買うための一時的な投資です。
最初の数件は、報酬よりも「納品実績」と「評価」を得ることに意味があります。それがあるから次の案件が取れる。だからその時期に価格を下げるのは、戦略として正しい判断です。問題は、そこで止まってしまうことです。
安い価格で受け続けると、それが自分の定価として固定される
作業量は変わらないのに単価だけ低い状態が続き、消耗して、映像制作そのものが嫌になっていく。この流れに入ってしまう人を、何人も見てきました。
実績が積み上がってきたら、段階的に価格を上げていってください。ポートフォリオが増え、リピートの依頼が来るようになったら、それは価格を見直すサインです。
見積もりを出すときの注意点

最後に、実務でトラブルになりやすいポイントを3つ挙げておきます。
有料素材の購入実費は、見積もりに含めない
素材費として計上しているのは「探す手間」の対価です。素材サイトの購入代金やサブスク費用そのものは別扱いにして、見積もりに「素材の購入実費は含みません」と一行書いておきましょう。ここを曖昧にすると、高額な素材が必要になったときに自腹を切ることになります。
編集データの納品・著作権譲渡について
「プロジェクトファイルもください」「著作権はこちらに譲渡してほしい」と言われることがあります。
考え方としては、これらは標準の納品物には含まれません。求められた場合の目安として、編集データの納品は見積もり額の+50%、著作権譲渡は+100%という水準があります。データを渡せば以降の修正案件がなくなり、著作権を譲渡すれば実績として公開する権利も失うためです。また場合によっては改変されて使いまわされてしまいます。著作権譲渡は+200%という方のお話も聞いたことがあるくらい重要なものです。
ただし、これはあくまで参考の目安です。特にクラウドソーシングでは他の応募者との比較になるため、そこで強気に出ると受注自体を逃します。実際には無償で提供することも多いのが現実です。
案件の性質と自分の立場を見て判断してください。大事なのは、「タダで当然のもの」ではないと知ったうえで判断することです。
納期と特急対応
納期の目安は、動画の長さによって変わります。5〜15秒なら約2週間、30秒で約3週間、60秒以上は約4週間が一つの目安です。
これより短い納期を求められた場合は、割増を提示していいと思います。一般的な慣行では、特急対応は2〜3割増しが目安です。他の案件のスケジュールを調整して優先的に対応するわけなので、その対価を受け取るのは自然なことです。
まとめ:価格は構造で決められる
アニメーション動画の価格は、感覚ではなく構造で決められます。
✓ 台本、素材、絵コンテ、アニメーション。工程ごとに積み上げる
✓ 制作会社の相場をそのまま使わない。固定費の構造が違う
✓ 長さと金額は比例しない。短い動画ほど秒単価は高くなる
✓ 駆け出し価格は投資。実績が積み上がったら、段階的に上げていく
この記事で示した金額は、あくまで一つの基準です。そのまま使うのではなく、自分の状況に合わせて調整して使ってください。
見積もりシミュレーターは無料・登録不要で公開しています。案件の相談が来たときに、まず一度計算してみてください。
それでは、また。